腐食に触れるサプライヤーの見積書は、まず時間数を掲げます。240、500、1000。この数字は非常に多くの意味を負わされていますが、その大部分は数字が負いきれない意味です。
当社は粉体塗装を施したダイカストハウジングに、ISO 9227中性塩水噴霧試験を240時間実施しています。この一文で何を主張してよく、何を主張してはいけないのかを正確にすること——それが本稿の目的です。
以下では、塩水噴霧試験の成績書が実際にはどのような構造になっているのか、なぜ同じ時間数がまったく異なる製品を指しうるのか、そしてサプライヤーの成績書を比較可能にする4つの問いを取り上げます。
先に結論を述べます。塩水噴霧試験が測るのは、ある特定の人工的な噴霧環境の中で、同じ試験槽に入った他の表面処理と比べてその表面処理がどう振る舞うかです。時間数は、その噴霧の中に部品が置かれていた長さを示します。屋外で何年もつかを示すものではありませんし、それどころか時間数だけでは、どの程度腐食したのかさえ示していません。その判定は別の評価基準から得られるものであり、多くの成績書はその基準に一切触れていません。
塩水噴霧試験が実際に測っているもの
管理された腐食性の噴霧の中に一定時間置いた後の、試験片の状態です。それ以上のことは測っておらず、それは意図されたものです。
試験槽の中では、pHを狭い範囲に保った塩化ナトリウム水溶液から、温度を管理した塩水噴霧が連続的に供給されます。この管理の目的は再現性です。同じ方法で運転する試験所であればどこでも同じ環境がつくれて初めて、別々の場所で得られた結果を並べて比べられるからです。
ASTM B117の適用範囲には、その目的がはっきりと書かれています。この方法は、相対的な耐食性の情報を得るために用いる、管理された腐食環境を提供するものである、と。相対的、という語が要点であり、しかもそれは規格が自らを説明する文言の中にあります。この試験は、同一の人工条件下で表面処理どうしを順位付けます。実在するどの場所も再現していません。
この一語が、本稿でこの後に続く混乱のほとんどを説明します。時間数は順位の中の位置であって、使用に耐える期間ではありません。
噴霧を発生させる規格と、損傷を判定する規格は別物です
ここが多くの成績書で抜け落ちている部分であり、その成績書に意味があるかどうかを決める部分でもあります。
関係する規格の正式名称を読めば、その分担は明らかです。ASTM B117の表題は、塩水噴霧試験装置の運転に関する標準方法です。装置を動かすことについての規格です。ISO 9227も同じ立て方で、塩水噴霧試験そのもの——装置、試薬、手順——を扱っています。
どちらも、その部品が合格したかどうかは教えてくれません。その判定は、腐食損傷の評価のために書かれた別系統の規格に属します。
| 役割 | 規格 | 表題からわかること |
|---|---|---|
| 噴霧を発生させ維持する | ASTM B117 | Standard Practice for Operating Salt Spray (Fog) Apparatus |
| 噴霧を発生させ維持する | ISO 9227 | Corrosion tests in artificial atmospheres — Salt spray tests |
| 生じた損傷を評価する | ASTM D1654 | Standard Test Method for Evaluation of Painted or Coated Specimens Subjected to Corrosive Environments |
| 生じた損傷を評価する | ISO 4628-8 | Paints and varnishes: assessment of delamination and corrosion around a scribe |
評価規格は、印象ではなく測定によって機能します。ASTM D1654では、塗膜を貫く傷(スクライブ)を試験片に入れ、その線から腐食が横方向へどこまで進んだかを測り、平均の進行幅を決められた尺度上の数値に換算します。ISO側で同じ役割を担うのがISO 4628-8で、その表題自体が評価の対象を示しています。すなわち、スクライブ周辺における膜の剥離と腐食の程度です。どちらが適用されるかは表面処理によって決まります。ISO 4628シリーズが対象とするのは塗料およびワニスで、粉体塗装もここに含まれます。一方、陽極酸化処理のような金属被覆・無機被覆は、ISO 10289で評価されます。
ですから、ISO 9227、240時間、合格、という一行が伝えているのは試験槽と時計だけです。評価基準も、達した評価も、部品のどこで測ったのかも伝えていません。
同じ240時間の成績書が別の製品を指しうる理由
時間数は、試験槽に何が入ったのかを何も語らないからです。
塗装した平板試験片は、考えうるかぎり最も条件のよい試験片です。均一で、締結部品もねじ部も継手もなく、接触する異種金属もありません。粉体塗装は平らな板であれば均一かつ確実に乗るため、試験片が表面処理を実際以上によく見せます。
組立完成品のランプは、はるかに厳しい試験片です。塗膜が薄くなる鋳造の鋭いエッジ、取付用のねじ穴、ケーブル引込部、レンズとハウジングの合わせ面、そしてアルミニウムに締結されたステンレス製ブラケットがあります。そのいずれもが、平板試験片には存在しない侵入経路です。
どちらも、240時間として正直に報告できます。しかし同じ主張ではありませんし、時間数の中にその区別はありません。
| 確認すること | なぜ答えが変わるのか | 使える答えの例 |
|---|---|---|
| 試験槽に入っていたのは正確には何ですか | 平板試験片と組立完成品のランプでは難易度がまったく違います | ブラケットを取り付けた、組立済みの完成品ランプ |
| どの評価基準を適用しましたか | 時間数は判定ではありません。判定を与えるのは評価基準です | 成績書に明記されたASTM D1654またはISO 4628-8による評価 |
| どの評価に達しましたか | 合格は評価ではありません。尺度上の位置が評価です | 合格という語ではなく、明示された尺度上の具体的な評価 |
| 評価をどこで測定しましたか | 平面はエッジ、ねじ部、継手よりはるかに良好に振る舞います | 測定箇所の明示。少なくとも1か所はエッジまたは締結部を含む |
どれも無理な問いではありませんし、実際にランプを試験したサプライヤーであれば、手元の成績書から4つとも答えられます。答えられないサプライヤーは、誰か他人が出した数字を引用しています。
時間数は年数に換算できません
換算係数は存在しません。換算を示してくる相手は、この試験では出せない確実さを売っています。
この限界は秘密でも少数意見でもありません。促進塩水噴霧の時間数と実際の屋外暴露との関係は、塗料業界の内部で長く議論が続いている論点であり、大手の塗料メーカー自身がB117の限界について資料を公開しています。噴霧は一定で、濡れたままで、温度も一つです。実際の沿岸暴露は断続的で、乾燥の周期があり、紫外線、温度変化、摩耗、汚染物質を伴います。この周期が効いてくるのですが、試験槽にはそれがありません。
とはいえ、この試験に価値がないわけではありません。比較の道具になるということです。一つの試験槽、一つの試験片設計、一つの評価基準の中であれば、他方より長く耐えた表面処理は実際に耐食性の高いほうです。2社のサプライヤーや2つの工程のどちらかを選ぶとき、これは本当に役に立つ情報です。
できないのは、そのランプが船上で何シーズンもつかを示すことです。サプライヤーがその換算を示してきた場合、どれほど自信ありげに提示されていても、その数字は作られたものです。
ランプが実際に腐食し始める場所
誰もが最初に見る広い平面から始まることは、ほとんどありません。
粉体塗装は静電気で付着させるため、部品上の電荷の分布によって、形状が最も鋭いところで膜がいちばん薄くなります。鋳造のエッジ、ねじ山の頂、開口部の縁は、いずれも隣の広い面より塗膜が少なくなります。破れが始まるのはそうした場所です。
あとは機械的な損傷が仕上げます。取付時にぶつけられたランプや、1シーズンにわたって取付部に当たって振動し続けたランプは、塗膜そのものが劣化するはるか前に、どこかで塗膜が破られています。耐食性と機械的な頑丈さが別の話題ではないのは、このためです。その4か所と、サプライヤーがそれぞれを試験しているかどうかを見極める問いを、以下に示します。

| 場所 | ここから始まる理由 | 確認すること |
|---|---|---|
| 鋳造のエッジと角 | 静電塗装は形状が鋭いところで最も薄くなります | 評価は平面だけでなくエッジでも測定しましたか |
| 取付用のねじ穴 | ねじ山の頂には塗膜が乗りにくく、締結部品がそれを削ります | 試験時に締結部品を取り付けていましたか |
| ケーブル引込部 | 異種材料の継手であり、使用中に動きもします | 試験片にケーブルとそのシールは付いていましたか |
| ブラケットの接触面 | 電解質がある状態で、ステンレス鋼がアルミニウムに接します | 試験のためにブラケットを規定トルクで取り付けていましたか |
最後の行は他の行とは機構が異なるため、注意が要ります。ステンレス鋼とアルミニウムが接触し、海水がその間を橋渡しすると、ガルバニック対が形成され、アルミニウムの側が失われていきます。両者を隔てているのが塗膜であり、ブラケットの接触面の傷が、何もない広い面の傷より重大なのはそのためです。
当社の試験方法と、そこから主張していること
当社は自社の試験槽で、粉体塗装したダイカストハウジングにISO 9227中性塩水噴霧試験を240時間実施しています。

自社で実施していることが変えるのは数字ではなく、お伝えできる内容です。試験片が何であったか、ブラケットを取り付けていたか、その後どの面を調べたかを申し上げられます。当社の成績書を他社のものと並べたとき、240時間に意味を与えるのはこれらの答えです。
当社が主張しないこと。240時間が実使用の何年かに相当するということ、塩水噴霧試験の結果があればそのランプを常時水没させて使えるということ、そして合格した表面処理は衝撃でも破られないということ。いずれもこの試験が支えるようにできていない主張です。
表面処理は全体の半分にすぎず、しかもどの表面処理が選べるのかは、多くの購買担当者が思うより前の段階で決まっています。ハウジングに使われている合金が、誰かが塗装を指定するより前に選択肢を絞っています。
よくあるご質問
塩水噴霧試験は何時間必要ですか?
普遍的な数字はありません。時間数は、塩水噴霧試験の規格ではなく製品仕様の側で決まるからです。目標値そのものより重要なのは、サプライヤーを比較するときに同じ時間数、同じ試験片、同じ評価基準を使うことです。組立完成品のランプでの240時間という結果は、平板試験片での500時間という結果より強い主張です。
塩水噴霧試験に合格していれば、その灯具は海水に耐えると言えますか?
いいえ。この試験が与えるのは塩水噴霧であって水没ではなく、対象もシール構造ではなく表面処理です。ハウジング内部への水の侵入は別の問いであり、それに答えるのはIP保護等級の試験です。しかもその手順が規定しているのは水温であり、塩分濃度については何の要求もしていません。
500時間の主張と240時間の主張を比較できますか?
両方の成績書が同じ試験片と同じ評価基準を示している場合に限ります。一方が塗装した平板試験片、他方がブラケットを取り付けた組立完成品のランプであれば、数字の大きいほうが条件の易しい試験を指している可能性が十分にあります。まず試験槽に何が入ったのかを確かめ、それから時間数を比べてください。
この記事をどう使うか
この記事が決着させようとしているのは狭い問題です。目の前にある耐食性の主張が、別の主張と比較可能かどうか。何を試験し、どの評価基準で、どの評価に達し、どこで測定したのかをご確認ください。
腐食性環境向けのランプを選定されるのであれば、時間数だけを見るより、ハウジングの製法と表面処理を見るほうが次の一歩として有用です。時間数が測っているのは、まさにそこだからです。